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百品考

厖 和名むくいぬ
詩緝、厖犬之多毛者、 説文、多毛曰厖、長喙曰獫、短喙曰猟、 本草綱目、李時珍曰、狗類甚多、其用有三、田犬、長喙善猟、吠犬、短喙善守、食犬、体肥供饌、凡本草所用、皆食犬也、
本草に、田犬、吠犬、食犬の三種お挙ぐ、田犬はかりいぬ、田猟に用ゆるものなり吠犬はほえいぬ、 人家に畜て夜お守らしむる者なり、食犬はむくいぬ、状ち肥て毛長し、西土常に飼て肉お食用 に供す、即厖なり、古説に厖おすいけんと訓ず、非なり、此は花鏡お誤読しなり、花鏡に多毛曰厖 とあげて、其下にすいけんの形状お載たる故に誤たるなり、すいけん、即金糸狗にして、払(ち)菻狗(ん) の一種、毛長く面お掩ふものなり、払菻狗は、すいけんの毛短きものなは、漢土にも元なし、西域 払菻国より唐の世初て来る、故に払菻狗と雲唐書に見えたり、厖の字は、爾雅詩経などの古書 に載す払菻狗にあらざること明なり、