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良将達徳抄

南竜院殿御足〈江〉猛犬喰付之時直に喉中に踏入給ふ事
宰領の歩行の者、小姓衆に向ひ、此犬ことの外人に荒く候と申お、御構なく、椽鼻にて、此犬はりやうぎゝにて可有、能貌がまへ也と、御足にて犬の貌お御なで候得ば、其犬大きにほえて、御足に喰付お、御足お直に犬ののどへ踏入させ給ふ、犬はのどへ足おつきこまれ、散々吠て尾おすぼめ逃のく、是より頼宣卿お、彼犬見奉りては恐れて、いつも尾おしきたる也、此時御足御引候はゞ、かみ切可申お、直に犬ののどへ踏込給ふ、其早業剛強たとえん方なし、