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雲錦随筆

丹後国与謝郡宮津より程近きに、犬の堂といへる小堂あり、往昔九世戸の智恩寺と波治村の海岸寺とに畜養し、犬の菩提の為に建る所とそ、海ばたの小坂の上なり、堂内に標石ありて、林道春の碑文あり、
丹後国九世戸文珠堂近辺有寺、曰海岸、伝称、昔海岸寺僧兼管文珠堂、其僧畜養一犬愛之、此犬毎 日自海岸寺往来文珠堂累年、犬死僧憐之建一宇、弔祭之、号犬堂、鳴呼猶慕其寺主之愛僧、亦思及 之物不亦奇乎、爾来星霜既旧、堂宇毀壊、非無懐古之感、今興土木之事、成斧斤之功、乃記其趣、 以為御後証、
延宝六戊午月日 当国宮津城大江姓尚長立
弘文院林学士誌