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古今著聞集
二十/魚虫禽獣
保延のころ、宰相中将なりける八の乳母、猫おかひけり、その猫たかさ一尺ちからのつよくて綱おきりければ、つなぐ事もなくてはなち飼けり、十歳にあまりける時、夜に入て見ければ、せなかに光あり、かの乳母つねに此猫にむかひて、女死なん時われに見ゆべからずとおしへけるは、いかなるゆへか、おぼつかなき事也、十七になりける年、ゆくかたおしらずうせにけりとそ、