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伊豆海島風土記

大島之事
羊の多き事其数難計、五匹七匹あるひは二三十匹宛打むれて、人家近くも出、作物おぬすみ喰ひ、山奥には一むれに、百も二百も打集りて遊ぶ、然るに此ひつじも、むかし上より二匹とかわたさせられしが、子お生じ年お追ふて数弥増、又享保の頃、御用ひの事ある迚、二三匹生捕にして奉りける事もありけるゆへ、羊お殺たるものは、おもき罪おかふむる事といひならはせて、追散らす事もせざるゆへ、猶増長して徘徊するといふ、此外の獣は猫鼠ばかりなり、