[p.0218][p.0219]
古今要覧稿
禽獣
むくひつじ(○○○○○) 〈やぎ(○○) 夏羊〉
むくひつじ、一名むくげひつじ(○○○○○○)、一名やぎう(○○○)は漢名お夏羊といひ、その牡お羖、一名羖䍽羊(○○○)、其牝お羭、その黒色なるお黒羖䍽、一名黒羖羊、一名骨䍽、白色なるお古羊、青色なるお青羖羊、又その角お羖羊角、、一名皂莢といふ、先年江都観場時にこれありしものは、所謂白色のものにて、今肥前長崎に多し、其状犬に三倍して、家猪よりは少さし、漢客蛮人ともに日用の食品なるによりて、土人これお稲佐立山辺に飼おきて屠るよし、〈長崎聞見錄〉其毛長く、角は彎曲して後にむかひ、眼傍及び鼻辺淡紅お帯て臭気あり、〈観文獣譜〉此即本草図経に所謂羖羊白色のものにて、膳夫錄にいはゆる古羊なり、一種朝鮮やぎあり、その毛色形状すべて尋常のやぎに似て黒斑あり、角少して彎曲しあ、前に向ふお異なりとす、〈同上〉此即〓涯勝覧に、闘羊頗似綿羊、角彎曲向前、上帯小鉄牌と、〈天中記引〉いへる類なるべし、又阿蘭陀やぎあり、毛至て長く額毛垂て眼お覆ひ、角は尋常のやぎに同じ、〈観文獣譜〉此即本草図経にいはゆる毛長尺余のものなるべし、又全身黒色のものは、長崎及び薩摩大隅等に多しと〈西遊記〉いへり、さて今長崎にあるはずべて白色のものなれども、橘春暉が見しは、即郭璞注爾雅にいはゆる黒羖䍽にして、膳夫錄に所謂骨䍽なり、また背のみ黒くして、其余は白色のものあり、此即紹興本草に図する処の羖羊也、これお証類本草には、全身白黒班文のものに図すれ共、恐らくは伝写の誤りならん、