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古事記伝
四十
猪甘(いかひ)、甘は養(かひ)なり、〈養に甘字お書ること、中巻玉垣宮段鳥甘部(とりかひべ)の下、伝廿五の卅九葉に雲、〉 古は上下おしなべて常に獣肉おも食たりし故に、其料に猪おも養置るなり、〈中昔よりこなたには獣肉お食こと無き故に、猪お養こともなくして、猪といへばたゞ〉〈野山に放れ居る猪のみにて、其は漢国にて野猪と雲、崇峻紀には山猪とあり、人家に養る猪は豕にて、俗に夫多と雲、〓と雲も同物なり、豕お韋能古と雲は、たゞ猪と雲ことにて、鹿お加古(かこ)と雲、馬お古麻と雲と同じ、猪之子のよしには非ず、猪之子は豚字なり、〉