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東雅
十八/畜獣
鼠ねずみ 義不詳、大己貴神、素戔烏神のまします根堅洲国に参り給ひしお、其大神鳴鏑お大野之中に射入て、其矢お執らしめて即火おもて其野お廻らし焼給ひしに、鼠来りおしへまいらせしまゝに、其処お踏落して、隠れ入り給ひし間に、火は焼過にけりといふ事、旧事紀、古事記に見えて、倭名抄には、四声字苑の鼠は穴居小獣也といふ注お引けり、さらばねずみといふは、ねとは猶根堅洲国などいふが如く、幽陰之所おさす也、すみとは栖也、其穴居するお雲ひしなるべし、〈古語にねと雲ひしに、幽陰之義ある也、草木の根おねといふが如きも、寝おねと雲ひ、眠お子ぶるといふが如き、並に是也、或人之説に、ねすみとは、ぬすみの転語也といふ也、大朴の世の〉〈如きも、既に鼠窃などいふ事もありしにこそ、ぬすみなどいふ語は、鼠に因りて雲ひしなるべけれど心得がたき事なり、〉