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物類称呼
二/動物
鼠ねずみ 関西にてよめ、又よめが君といふ、上野にて夜(よる)のもの、又よめ、又おふく、又むすめなどいふ、東国にもよめとよぶ所多し、遠江国には年始にばかりよめとよぶ、其角が発句に、
明る夜もほのかにうれしよめがきみ
嵯峨住去来が曰、除夜より元朝かけて、鼠の事お嫁が君と雲にや、本説しらずとぞ、野坡が雲、娶 が君は春気にてねずみの事なり、今按に年の始には、万の事祝詞お述侍る物にしあれば、寝起(ねおき) と雲へる詞お忌憚て、いねつむいねあぐるなど唱ふるたぐひ数多有、鼠も寝のひゞきはべれ ば、嫁が君とよぶにやあらん、又春気といふ時は、春三月のことなれば、いかゞ有べきか、尚説有、 こゝに略す、