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倭訓栞
中編一/阿
あまくちねずみ 倭名抄に鼷鼠およめり、甘口鼠ともいふによる也、今いふ廿日鼠也といへり、甘口は人お喫て痛まざるおいひ、廿日は極て細小なるおいふ、凡鼠毒の害おなすは、此鼠なる事本草に見えたり、筑紫に髪きりといふは、酉陽雑俎に、人夜臥無故失髻者鼠妖也とみゆ、曾て聞く江都に此事ありて、夜々髻短くなるおもて、其人恐て一二里の外に居お移せども、終に喰尽すによりて病死せり、又岡崎の医桂氏夫妻及子三年に毒鼠咬おもて皆死とぞ、