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源平盛衰記

清盛捕化鳥並一族官位昇進附禿童並王莽事
去程に夢見て、七日と申夜は、内裏に伺候したりけり、夜半計に及て、南殿に鵼の音して、一鳥ひヾき渡たり、藤侍従秀方、折節番にておはしけるが、殿上より高声に、人や候〳〵と被召けり、左衛門佐にて、間近候ければ、清盛と答、南殿に朝敵あり、罷出て搦よと仰す、清盛〈○中略〉畏てとて音に附て踊懸る処に、此鳥騒て左衛門佐の、左の袖の内に飛入、則取て進せたり、叡覧あれば実に小き鳥也、何鳥と雲事お不知食、癖物なりとて有御評定、よく〳〵見れば、毛しゆう也、毛しゆうとは、鼠にして唐名也、加様の者までも、皇居に懸念おなしけるにや、博士召せとて召れたり、