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嬉遊笑覧
十二/禽虫
鼠のよめ入といふ事、楽師通夜物語〈完永廿年の飢饉の時の双紙〉いにしへは鼠のよめ入とて、果報の物と世にいはれ雲々、白鼠、野鼠、小鼠、廿日ねずみ、こねら、おねら、おねの子産屋の内の赤鼠に至る迄、皆是飢饉に及申雲々、こねらは子鼠、おねらは雌の子鼠か、狂歌咄五古き歌に、よめの子のこねらはいかになりぬらんあなうつくしとおもほゆるかな、物類称呼に、鼠関西にてよめ、又嫁が君、上野にて夜のもの、又よめ、又おふく、又むすめなどいふ、東国にもよめと呼所多し、〈○中略〉と雲り、此名あるより鼠の嫁入といふ諺は出きしなるべし、又鼠お夜の物、狐お夜のとのといふ、似たる名なり、おもふに狐の嫁入は鼠の後なるべし、