重修本草綱目啓蒙

三十五/鼠

鼹鼹 うごろもち〈和名抄〉 うごろ〈備後〉 むぐら〈水戸江戸〉 むぐらもち〈薩州、備後、仙台、〉 むくろ〈雲州〉 むくろもち〈加州、越中、〉 むぐろ〈雲州、佐州、〉 むぐろもち〈備前〉 うぐら〈三州、防州、〉 うぐらもち〈豊後〉 うぐろきち〈新校正〉 もぐら〈大和本草、筑前、〉 もくろ〈雲州〉 おごろ〈阿州、和州、勢州、伊賀、〉 おぐらもち〈濃州〉 おごらもち〈四国〉 おんごろもち〈讃州〉 いぐらもち〈遠州〉 どりう〈江州、越後、和方書二土竜と書す、唐山にては蚯蚓及鼉お土竜と雲、〉 一名犂鼠〈楊子方言〉 豆地児〈郷薬本草〉
此鼠常に土内に棲、早旦に地下三寸許お潜行して蚯蚓お索食ふ、その跡土高く起り空虚となり、甫中の草根お浮動し、大に害おなす、早年には殊に此患あり、軽歩して鋤お以て行、後に立る時は驚て土上に出、若足響お聞けば速に避走りて獲こと能はず、土上に出て日光お見れば便死す、此にも見日月光則死と雲、和名抄には、見三光即死と雲、形鼠の如くにして肥扁、長さ六七寸、毛柔細にして微黒、用て刀剣お拭ふべし、頭痩鼻喙尖り出ること五分許、淡紅色脚も亦同色にして短く、五指あり、後足は小く、前足は至て大にして左右にひらく、此足にて土お撥し行く、甚力ありて大石おも動かす、尾は小にして短し、此鼠お捕へ、諸腸お去り浄くし焼て灰と為お、和方書に土竜霜と雲、土猪灰とも雲、和方多し、又用て払菻狗の疾お治す、