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兎園小説
二集
まみ穴、まみといふけだものゝ和名考、並にねこま、いたち和名考、奇病、〈附錄〉
著作堂主人稿
猫よりも、猶よく鼠お捕ふるものは鼬なり、その字鼬に従ひ由に従ふ、按ずるに、鼠に従ふよしは、形黙おもてす、由に従ふよしは、由は読みて猶予の猶の如し、鼬もその性疑ふものにて、人お見れば、走りつゝ、しば〳〵見かへるものなり、よりて由に従ふなるべし、譬へば狐の字の瓜に従ふが如し、瓜は読みて孤独の孤の如し、狐は群居せざるものなり、よりてその字瓜に従ふ、瓜は即孤なり又按ずるに、〈○中略〉いたちの釈名は、白石の東雅、契冲雑記にも見えず、按ずるに、いたちの言はきたちなり、又火たちにもかよふべし、いときとひと連声なればなり、さて鼬おいたちと名づくるよしは、此けもの、夜は樹にのぼり或はむらがりて、気お吹くときは、火気天に冲ることあり、俗にこれお火柱といふ、この故にいたちと名づく、即気立(きたち)也、又火起(ひたち)也、