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源平盛衰記
十三
鳥羽殿鼬沙汰事
五月〈○治承四年〉十二日の午刻に、赤く大なる鼬の何くより来り参たり共、御覧ぜざりけるに、御前に参り二三返走り廻り、大にきヽめきて法皇〈○後白河〉に向ひ参せて、踊上々々目影なんどして失にけり、大に浅間しく思召て、禽獣鳥類の恠おなす事、先縦多しといへども、此獣は殊に様有べしと覚たり、