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秉燭譚

猿と猴の事
鳥獣の中一種にて異類なるもの、それ〴〵の文字あり、日本にて通用して書けども、その実はなきものあり、猿(○)と猴(○)とは一類なり、その内猿と雲は手長きなるにて、いはゆるえんこうなり、日本にあることおきかず、日本のさるは猴なり、獼猴(○○)と雲是なり、この外鹿ありて麋なし、鸂〓ありて鴛鴦なし、有烏而無鵲、有馬而無驢のたぐひさま〴〵なり、本草字書お考てしるべし、然ども鴛鴦猿鵲は、詩歌の内、古より通じて言付書来たることなれば、今さらいふあじきにあらず、たヾそのわけお意得おくべきなり、