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新編常陸国誌
六十/土産
猿〈白猿○中略〉
文化中、久慈郡諸沢村の農家の婦、子お産て二歳、夏月これお浴せしめんとして、湯盤に沸湯おいれ、児お傍に置て水おとりに行たる間に、家に飼たる老猿ありしが、是児お浴せしめんとや思ひけん、沸湯とも弁ぜずして、児お以てこれに投じければ、是児忽に死す、猿其屍お抱持して驚噪する処へ、農婦水お取来り、大に驚き猿おいたく打こらしたるに、この猿涙お流してわぶるさまあり、明日厩お見れば、この猿頸くヽお死てありしと雲、