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重修本草綱目啓蒙
三十五/寓類怪類
猩猩〈○中略〉
増、本邦痘瘡の家に、猩猩の形お作りて祭る、痘瘡は色紅ならそことお欲す、猩猩は酒お好で酒は一身お順らし、紅色ならしむる故なり、往昔黄蘖山万福寺の開山隠元禅師、此猩猩お祭らしめ、痘瘡お軽くする禁呪おせしことあり、故に禅師入定の後も祀る者ありて、好事の者、唐土の不倒翁に擬して、禅師の形お作り為して、相共に祭らしむ、今おきあがりこぼしと雲人形是なり老翁不倒堅固の形お摸し、小児に祝して玩びの小人形とする者にして、今に至て、痘瘡の家ごとに、猩猩とおきあがりこぼしとお祝物とす、因みに雲、近年摂州の一比丘、痘瘡の呪おなすに、小き箕の裏に呪文お書し与へ、これお祭らしむ、若痘痒き時は、即此箕お掻く、若し痛む時は、此箕お摩すると雲、近比痘瘡家に、猩猩不倒翁小箕の三品お以て痘瘡の守護神とすと、本草綱目会誌に見へたり、