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駿国雑志
二十五
狒々
巡村記雲、志駄郡大堰河の奥深山にあり、身のたけ丈余、唇長くして、上に反倒し、頭髪長き事、頭髭おたれたるが如し、進退とき事、迅風の如し、好て献お食ひ、篠お食ふ、故に糞中獣毛と篠のみ也雲雲、猟師雲、行人是に逢時は、身おひそめ声お高ふすべからず、若人あるお知れば、害おなす事甚し雲々、或雲、是狒々に非ず、山丈(やまわらは)也雲々、按るに深山幽谷の内、何ぞ山丈のみならん、狒々も又在べし、