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倭訓栞
前編十一/志
しか 鹿おいふ、肉香の義にや、角の岐の数によりて声お発す、よて四声お限るもの也と、山家の説也、角に十二の岐あるもの、南都正倉院の宝物たり、又楓の形したるもあり、軍用にせし事多く見えたり、眼科には角お角石といふ、〈○中略〉ともしの鹿は、鹿児にて鳴ぬものなりといへり、〈○中略〉史に多入鹿為証前言といふ事見えて、叛意なきの旨お明せり、さおしかの八耳より出たるにや、春日に鹿お神使といへるは、第一殿は鹿島神にて、神幸の時、鹿に乗たまふよし、古記に見えたり、よて春日厳島ともに鹿民家に多くて犬の如し、〈○中略〉鹿お追者は山お見ずとは、淮南子に逐獣者目不見大山と見ゆ、