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堺鑑
中/古跡
釣狐寺
南荘少林寺の塔頭、永徳年中に耕雲庵と雲あり、其住僧伯蔵主と雲り、此僧鎮守稲荷明神お信仰して、毎日法施不怠、或時神感応有て、森の中に三足の野狐あり、抱帰て養愛す、此狐に有霊、達随仕用、追賊難事あり、其孫々三足にして、今に至寺内に住居す、稲荷霊験新也、世に雲伝、釣狐の狂言〈又吼噦(こんくわい)共いへり〉此寺より発り、然は才覚なりし狐の謀なれば、其時大蔵某狂言に作しお、彼狐感じ、老翁に化して狂言お見て、猶野狐の骨髄動お口伝せしとなり、誠に狂言綺語とは雲ながら、道に達しぬれば、如是奇特も有事にや、猶家の大事とする狂言也、