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本間游清書簡
出雲町といふ所に、狸庵といふ卜者あり、もとは中津の君の臣なりしが、彼家お出て、今は卜お以て世わたらひのたづきとす、性狸お愛して、家に二匹の狸お養ひ、己が子よりも深く愛し、食なども子には与へぬ時も、狸には与へぬ、狸の話お記せし書、十巻ほど有て、いづれも二三百葉づゝ有といふ、狸の話お知る人あれば、百里お遠とせず、行て聞也、一奇人也、