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新編常陸国誌
六十四/土産
猯(まみ)今多からず、筑波郡に〈今西猯穴〉狸穴村ありてまみあなと訓ず、依て思ふに、狸の別種と見えたり、〈江戸の府下麻生にも猯穴と雲小地名ありて、狸穴にも作る、〉河内郡に東猯穴村あり、茨城郡にも村に狸穴と雲地名あり、大掾氏の族真美穴林氏の起る所なり、〈大掾伝記に見ゆ〉これ皆猯の住るより起れる名と見えたり、其体狸の少しく大なるものにて灰毛(はいけ)色なり、大体たぬきに相似たるものなり、又津軽にてまみと雲もの一種あり、其形猫の大さにて、面丸毛色純黒なり、其肉あぶら多し、奥州津軽の俗好てこれお食ふと雲、思ふにまみと雲は味実の意と見へたり、〈津軽の俗説に熊子お生肱、二匹の内一匹はまみなりと雲、故に異名お熊の落し子と雲ふ笑べし、〉今本国の俗諺に虚誕お好て実情察し難き人お猯遣ひと雲なり、これは狸のことお混合せしにや、