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駿国雑志
二十五
くだ
止駄郡横内村朝比奈山にあり、里人雲、当村朝比奈山の辺りにくだと雲獣あり、其形及大さ鼬の如し、人是お生捕り、飼馴し遣ふ時は、金銀衣食自在にして、事のかくるなし、此獣味噌お以て常の食とすべく、食物はまづ初おとりくだに与へて後食ふ、恰も神に供するが如しもし誤て其扱ひ飼ふ事おろそかなれば、忽他につき、口ばしりて、其尊信する志のうすきお詈り恥かしむしうねき物怪に似たり、くだ遣ひは、天下の大禁にして刑おまぬかれざるお知るといへども、土俗やゝもすれば、是お遣ふて富おうるお庶幾す、もと欲に耽るにおこるならん雲々、是尾さき狐の類にや、