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西遊記
続編二
熊胆
此地〈○琉球〉に木熊土熊(○○○○)とて二種あり、土熊は土の穴の中に住て、其体大ひなれども鈍し、木熊は枯木のうつろに住、其体小さくして建かなり、よく樹木の上に登る、其故に木熊の胆は小さけれども、気味猛なり、土熊の胆は大にして鈍しといふ、又木熊の胆の中に琥珀手といふ物有、是も又上品なり、京都にて撰む所は加賀の熊胆お最上とす、信濃は少し大也、蝦夷松前より出るは格別大ひなり、然れども皆加賀の胆にはおとるといふ、熊も又松前は甚だ大ひにして、就中羆などは殊に大ひにして、よく牛馬お掴裂て喰ふ、人お害する事大かたならず、猛勢あたるべからずとぞ、彼地より来る熊の皮おみるに、毛甚だ深く皮大にして、毛の色金色なるも有、毛至て厚きものは、人の手お五つ重ねて、猶よく毛の中に隠るゝあり、皮の大きさも畳三帖お隠すもの有、虎の皮三枚の大さあり、他国にはかゝる熊はたへてなし、