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蝦夷国風俗記

つくないの事 日本の過料
松前家臣に、上乗といふ役目あり、猟虎皮鷹の羽、〈松前にて鷲の羽お鷹の羽ともいふなり〉海鱸(あしか)、水豹(あざらし)、熊反熊胆、えぶりこ等の課お採るが主役なり、此役松井茂兵衛あたりて、あつけしに上乗し行たり、ときに同処の近村にびばせい村といふ処あり、この村の乙名熊胆一つ租税とす、鑑定役ありて目利おすれば、偽物に究む、よつて松井茂兵衛大きに憤り、あつけしの〓乙名いこといお呼出し、吟味お究れば贋なり、贋お貢物に出すは、〓乙名の科也、日頃の教爾の不埒なりと大に呵り威されたり、依ていことい彼熊胆の出処お委しく糺しければ、びばせい乙名くなしり島へ渡海せし時に、交易して求得る熊胆なる事慥にしれたり、