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西遊記
続編二
熊胆
松前辺にては乗馬にても、小荷駄馬にても野外に出て、其山の近きあたりに羆居れば、匂ひお嗅と得て、その馬恐れ立すくみて、小便おのづから出て、一歩もあゆむ事能はず、斯のごくなれば、武家などの乗馬は、多く南部の馬お用る事とそ、奥州地には羆無きゆへ、南部生れの馬は知らざるゆへ羆お恐れず、初にこれお試るに、馬場の真中に羆の皮お敷て馬おすゝむるに、松前生れの馬りは恐れてあゆまず、南部生れの馬は皮の上おもよくあゆむなとそ、