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蒹葭堂雑錄

豪豬(がうちよ)俗雲、也末阿良之、山豬、蒿豬、豲瑜(ぐわんゆ)、鸞豬等の名あり、安永元年阿蘭陀より薩摩国へ伝来し、翌二年巳の春、浪華に来りて観物とす、其形豬の如く、頭兎に似て色白し、身毛長く平くして髪掻(かうがい)のごとく、恰も管お以て作し蓑お著たるが如し、身お奮ひ動かす時は、鳴音金具お打合すがごとし、毛の色白き中に、所々茶色の斑あり、実に奇異の獣なり、一説に、唐土南陽の深山に生ずるさるまんとう是なり、又霊獣目鑑に見へたるは、身毛其年の気によりて変ず、唐人其色お見て歳の運気お考るといふ、当時の豪豬は咬瑠吧(じやがたら)国の産なるお、蘭人捕獲て持渡しといふ、本草綱目にいへる豪豬の説とは大同小異なり、略之、