[p.0447][p.0448]
常山紀談

朝鮮にて何れの所にてか有けん、清正の陣大山の麓なりけるに、虎夜来りて馬お中に引さげ、虎落の上お飛出けり、清正口惜き事なりと怒られけるに、小性上月左膳おも虎来て咥殺せり、清正夜明ると山お取巻て、虎お狩たるに、一匹の虎生茂りたる萱原おかきわけ、清正お目がけて来る、清正大なる岩の上に在て、鉄砲お持ねらはるゝに、其問三十間計、虎清正お睨みて立止る、人々鉄炮お揃て搏んとするお、清正下知して打せられず、自打殺さんとの志なり、斯て虎間近く猛り来り、口お開きて飛かゝる処おうたれしに、咽に打込当ればそこに倒れ、起上らんとせしかども、痛手なれば終に死しぬ、