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象志
本朝享保十三年戊申六月七日、象牝牡(ひんぼ)二頭南京人持来る、同十九日、長崎十善寺唐人旅館に入るヽ、是南京人蛮国広南に渡り、此象お求来れり、
牡象(ぼざう/お)〈七歳〉頭長二尺七寸 鼻長三尺三寸 背高五尺七寸 胴囲一丈 長七尺四寸 尾長三尺三寸 寿命最長 背筋有毛余無之、人お乗には前足折乗之、五十歳にして筋骨備(そなはる) 逮百歳白象となる 鉄の句お以て駆使 芭蕉の葉、竹の葉お食ふ、飲水一たび二斗計、鼻お以て捲飲之、其行水陸共馬よりも速疾、水お渉に水の底お踏て行く、
牝象〈五歳〉頭長二尺五寸 鼻二尺八寸 長五尺計 高四尺七寸 胴囲八尺六寸 此親象は七間余り有りと、広南人語之、
此牡象去年長崎に於て弊なり、菓子の甘物お多く食ふ、舌の上に物お生ず、象奴療治するに適ず、長崎に豪気なる者有て、舌の上の病お濯取に、象快然として振尾、喜ぶが如し、然れども此によつて遂に弊るヽなり、