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本草綱目訳義
五十一/獣
膃肭獣
日本であやまり、おつとせいと雲、奥州松前津軽の方より出、蝦夷の生也と雲、丸口塩づけに出すが、松前の問屋にあり、形海獺に似て四足ひれ也、集解の説とはちがふ也、犬の如き足にあらず、其向歯二重になるお膃肭獣とし、一重お海獺とす、冬の中におつとせいおうる、多く歯一重にして皆海獺也、真物奥州にも希也唐には猶少しと雲、集解、東海水中に出と雲は、先朝鮮日本おさす也、薬に膃肭獣外腎お以てすると雲、故に一名海狗腎と雲、皐丸のことか、必読や集解の説に雲てあり、然れども外腎なり、然るに日本にはたけりと雲て、陽茎お乾て遣ふことにしてあり、唐では外腎おとるに臍おつけてとる也、故膃肭臍と雲ふ、即外腎也、膃肭が獣名也、おつとせいと雲て、日本ではけものヽ名にするあやまり也、本草には外腎のことばかりあり、肉のことなし、日本では、薬喰に、冬の内肉お食ふ、五福全書に、海狗、肉味鹹、性熱、無毒、主虚労雲々、此主治あれば、食用にしてもよしとみゆ、唐では膃肭獣にあざらしお以て偽ること必読にあり、形よく似たり、毛の斑点により見分ると雲、あざらしは毒あり、海豹が和名あざらしのこと也、奥州から出る、膃肭獣のたけりと雲に真偽あり、〈たけりと雲は陰茎のこと也〉真物は一方に毛附てあり、全たい小也、七八寸、小なるは五寸ばかりあるもあり、