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採薬使記
上/奥州
照任曰、東海松前津軽南部の海中に膃肭臍お産す、其形面は猫に似たり、口の両方に鬚あり、長さ三四寸ばかり、是亦猫の鬚に似たり、歯はに行に生じ、前足蹼あり、後足は魚の尾鰭の如く一所に節あり、是髦お鉄毘と名づけ、土人常に食ふ、他国の鰲鰹節お用ゆるが如し、背の毛は微黒色にして虎斑あり、頭上に穴あり、毛にて陰して見へず、陰茎の長さに寸余、是お専ら薬に用ゆ、総長大抵二尺以来あり、此外おつとせいに似たる物数多あり、一に曰大面は狗に似たり、にに曰どんだり、三に曰れつふ、四に曰あざらし、前足後足ともに肉ひれ如く、其色黒し、五に曰あじか、即是れ海獺なり、六に曰猟虎、その形膃肭臍に似て色黒赤し、
光生按ずるに、おつとせいの類あまたあり、源君美の蝦夷志にも略あらはせり、海狗といふ物即ち是れ膃肭臍なり、臨海志に曰、頭は狗に似て毎日水面に浮ぶといふ、