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甲子夜話

出羽国秋田は、冬は雪殊に降積り、高さ数丈に及て、家お埋み山お没す、然に雷の鳴こと甚しく夏に異らず、却て夏は雷鳴あること希にて、其声も強からず、各は数々鳴て声雪吹に交りて猶迅し、又挺発すること度々ありて、其堕る毎に必獣ありて共に堕つ、形猫のごとしと、これ先年秋田の支封壱岐守の叔父中務の語しなり、又語しは秋田侯の近習某、性強壮、一日霆激して屋頭に堕雷獣あり、渠即これお捕獲、煮て食すと、然ば雷獣は無毒のものと見えたり、