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駿国雑志
二十五
河童
伝雲、庵原郡巴河にあり、里人号て河童(かつは)と称す、其形五六歳の小児の如く、総身生臭く滑りて鯰の如し、眼円く、瞳子尖く光り、手足の指水かきありて鰭に似たり、常は水底に潜て形お顕さず、偶陸に出て人に敵する時は、力つよく、走るお追へば、早ふして捉がたし、或は組て勝事お得るあれば、其身発熱して煩ふ、もし是が為に害せらるゝ者は、必肛門より臓腑お引出されて、死お免るゝなし雲々、河童の説何方も同じかるべし、