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諸国里人談
二/妖異
河童歌
肥前国諫早の辺に、河童おほくありて人おとる、
ひやうすへに川たちせしお忘れなよ川たち男我も菅原、此歌お書て海河に流せば、害おなさずとなり、ひやうすへは兵揃にて所の名なり、此村に天満宮のやしろあり、よつてすがはらといふなるべし、又長崎の近きに澀江文大夫といふ者、河童お避る符お出す、此符お懐中すれば、あへて害おなさずと雲、或時長崎の番士海上に石お投て、其遠近おあらそひ、賭して遊ぶ事はやる、一夜澀江が軒に来りて曰、此ほど我栖に日毎石お投ておどろかす、是事とゞまらずんば、災おなすべしとなり、澀江驚き、これお示す、人皆奇なりとす、