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閑窻自語
和泉海獣語
和泉にすみし人のかたりけるは、かいづかの辺りの海辺には、とき〴〵海坊主(○○○)とかやいへるものいそちかくよる事ありて、家ごとに子どもおいださず、もしあやまちていづれば、とりいひておそる事とそ、両三日ばかりして沖のかたにかへる、そのかたち人に似て、大きに総身くろくうるしの如し、半身海上にあらはれたちてゆく、かたりしものうしろより見けるゆえ、かほおばしらずとぞ、