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経済要錄

羽毛第十一
鳥羽の雅なる者は、以て箭に削(はぐ)べく、且其尾の麗しき者お以て、武器の華彩お壮厳にすべく、或は文房の美観に供ふべし、又毛の軟にして鮮明なるは、以て鶴〓の類お織るべく、毛の極て細小なるは、以て褥の綿と為し、斑文花(ぱんや)の代りに用ゆべし、白鶴の翅の羽お本白(もとじろ)と称す、箭削(やはぎ)羽の最上なり、黒鶴の翅の羽お本黒と称す、第二等の羽とす、此二種の羽お白蒲呂(しろほろ)、黒蒲呂(くろほろ)と名て、弓箭家の甚だ珍重する所なり或は鵠の羽お白蒲呂とし、鸛羽(こうのとり)お黒蒲呂とする有れども、此は偽物のみ、鷲の羽と鷹の羽は、白黒の蒲呂に亜ぎたる貴品なり、其次は白鷺、朱鷺(とき)、鶬雞(まなづる)、青〓(あほさぎ)、鸐雉(やまどり)、雉子等の羽なり、数矢お削(はぐ)には、雁、〓、鴎等の羽おも用ゆ、烏羽は調伏の箭に削ぐと雲ふ、