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空穂物語
藤原の君
宰相、めづらしくいできたるかりのこにかきつく、
かひのうちに命こめたるかりのこは君がやどにてかへさゞるらん、とてひごろはとてこれなかのおとゞにて、君ひとりみ給へ、人にみせ給なとて、とらせ給へば、兵衛うちわらひて、かばかりにおやうみつくらん、人のやうにもこそつかうまつれば、いでかばかりぞかし、御心はとの給、兵衛たまはりて、あて宮にすもりになりはじむるかりのこ、御らんぜよとて奉れば、あて宮くるしげなる御ものねがひかなとの給、