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諸禽万益集

此書たるや、諸鳥お飼の秘おあらはし、まさに死せざるの神お知らしむ、けだし鳥おそだつることは飼のかげん、且水と虫とのかいやう、其時に随ひ応変するにあり、然るに其応変は寒中は鳥お内に置て、風雨雪霜の寒おしのぎ、暑中は鳥お凉しきに置て、その暑おいとひ、若性気おとろふるときは、あるひはむし、あるひは卵お飼て、其性お養ひ、其性のよはきものには、つよきおえがひ、其性のつよきものには、よはきおえがふ、常に籠おあらひぬぐひて、其羽のよごれ腐るおいとふなり、鳥の命数凡十有余年なり、まさに是お飼えざれば、かはざるにしかず、まさに是おかひえて、其死せざるの神おしれば飼て可なり、是おかへども死せざるの妙おしらざる、是おかひえざるものといふべし、飼て死せざるの妙おしる、是おかひ得るものといふ、予〈○左馬介〉童稚の頃より数万の鳥おかひ、一月に死する鳥いく百千といふことおしらず、遂に其死すべからざるおしる、予おもふに、性あるもの、死およろこぶものなし、何ぞこれお楽しむに、死おたのしむことあらん、是おあはれまざるは不仁なり、故に此書其神おしらしめ、飼ものおして、其鳥お死せざらしむ、予に同じき鳥飼あらば、これお信ぜよ、おそらくは其妙おうるにちかゝらんと雲、