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倭訓栞
前編十六/都
つる〈○中略〉 鶴は鳴声もて名くる成べし、田づも同じ、歌に蘆鶴(たづ)、ひな鶴、よるの鶴などよめり、鶴は千年にして蓋松に安ずといふ、えそにさるゝといふ、今丹頂、真鶴、白鶴、黒鶴あり、朝鮮鶴は対馬人の釜山浦にて捕る所也、朝鮮西土には食品とせずといひ、又琉球には鶴なしといへり、〈○中略〉明和九年の秋、伊勢一志郡にて鶴多く飛かけり、戦ひながら二羽落ぬ、つるくびは翹首也、宝永の主上、新内裏へ遷幸ならせ給ふ、鳳輦の上はるかに、鶴の舞かけりけるお、諸臣千年のためしとて、賀し物し奉られけるに、従一位前内大臣源通茂公、
和歌のうらとしへてすめるあし田鶴の雲井にのぼるけふのうれしさ、〈○中略〉日光山に豊太閤の放たれし鶴二三羽、野に四季ともに居て他に行かず、斉諧記に、仙人子安乗黄鶴而来と、伊勢安濃郡の西郊に、黄鶴雌雄五七年が間来り下る、その後見えず、最美観なりしと、家父の物がたりなりき、