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八雲御抄
三下/鳥
雁 八月柳のすえに風ふく時、とこよの国より来て、二月にかへるといへり、 つばくらめにかはるよし、見万葉、 万につまよふと雲 ふみつかひといへり 朝には海辺にあさる、夕されば山べおこゆるかりとよめり、まことにもしかり、あさなきてゆきしかりがねと雲 万、きなく、 はつ 帰はつたかりがね 万にそのはつかりの使と読り、初五字に九月とあり、九月もなおはつかりとはいふべし、 凡かりの使は蘇武事よりおこる、たがたまづさおかけてきつらんなどいへる此心なり、又うすゞみにかくたまづさに似は、雁の飛たる也、ことぢにも寄 つばさ おほいは あまとぶや かりがねは 雁声也、隻雁お雲にあらず、かりのとも、雁かともよむ同事也、 又あめわかひこの射こうされたるおり、はやかぜおやりて、かばねおそらへのぼせけるにがり、 すゞめ かやぐきなど、もろ〳〵の鳥お為使と雲、 是は不限雁使也、