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奥州後三年記上
将軍〈○源義家〉のいくさ、すでに金沢の柵にいたりつきぬ、雲霞のごとくして野山おかくせり、一行の斜雁雲上おわたるあり、雁陣たちまちにやぶれて四方にちりてとぶ、将軍はるかにこれおみて、あやしみおどろきて、兵おして野辺おふましむ、あんのごとく草むらの中より三十余騎のつはものおたづねえたり、これかくしおけるなり、将ぐんのつはものこれお射るに、数おつくして得られぬ、〈○下略〉