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甲子夜話
四十四
林子曰、雁の北帰は諸書にも見へ、且先年旅西亜国に漂到せし者、彼国に夏月雁の居しお目の当り見き、雁は翼の強き者ゆえ、其通りなれども、鴨は翼弱く、殊に小〓は別て弱し、中々大洋海お越へ去るべきに非ず、夏月は其もより人知らぬ深山などにも蟄するや、訝しき者と思しに、松山〈伊予国〉の人の話に、夏月農民田お耕しけるとき田のくろに穴ありて、〓の蟄せしに鍬打かけて、〓お捕しこと有しと雲、暖地にては地中に蟄することも有にや、珍き話なり、