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三養雑記

がん〳〵みつ口
童子の口ずさみに、雁々みつくち、あとの雁が先になつたら、こうがひとらしよ、といへることあり、筑紫がたにてももはらいふことゝぞ、その詞のわけは、雁々みつくちとは、雁々見尽せといふことなり、遥に飛行お見つくすといふ意なり、さて雁といふ鳥は、おのが子お先へたてゝ、親鳥はそのあとより飛行ものなれば、親鳥先へ立ならば、子お奪取るゝであらふといふこゝうにて、こうがひは、子おうばひおいひ訛れるなるべく、とらしよは、とらりよの転訛なりと、鍋田晶山いへり、筑紫がたにての唱も、事はおなじけれど、となへはいさゝか異なれば、そのなまりのまゝお左にしるす、
がん〳〵、しつちやうがん、しつちやう、あとのがんなさきになれ、さきのがんなあとになれ、ゆみの おれたやのおれた、はやういたてみづかけろ、