[p.0576][p.0577]
嬉遊笑覧
十二/禽虫
棹になれ句になれとて、雁の連りて飛お興ずるは、卜養狂歌、春の頃鷹の雁お、おほくさほにかけてとおるおみて、歌よめとあれば、かんかりやうつかりかねとはしたかにとられて後も棹になれ〳〵、犬子集、舟にのれ棹になりつゝかへる雁、〈重次〉狂歌咄、棹になりて夜すがらわたるくらかりの空に雲々、松の落葉、近江八景、ひら〳〵とむれいる雲に、さほになりてとおろ、あとながさきへ、さきながあとなら、かうがいとらしよ、〈○中略〉仲実の歌に、そらいろによそへることのはしらおばつらなる雁とおもひけるかな、江戸の童は、がん〳〵みつくちといふ、みつ口とは琴柱の形になるおいひ、かうがいは釵おもいふ、是も琴柱の形なる物故、取出ていへるにや、