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農業全書
十/生類養法
家鴨(○○)
あひるは池河など水辺にて多く畜べし、水草も多く稗など多く作るべき余地ある所猶よし、其辺りに小屋お作り丙に棲(とぐら/とや)お作りて、狐狸などの災なき様に、いかにも堅くかこひて、雌鳥十あれば、雄鳥二つか三つの積りにて、土地と手前の分量によりて、いか程多くも畜べし、雑穀粃は雲に及ばず、浮草お多く入れ、又は野菜のえりくづおいか程もおほく入る事一入よし、昼は水中に遊び、夕方悉くむらがり集り来り、塒(とや)に入やうに常にならはしおくべし、他の仕事のならざる、下人童などある物なれば、是おして餌お求め、朝夕の出入お守らすべし、此外其者の少は得たる事おつとめさすれば、其口すぎは必ある物にて、年中の玉子は利分となるべし、一鴨一年に百五六十の卵は産物なれば、百雌鴨の卵、凡一万五六千、此価やすくとも一貫目余はあるべし、三分一は飼料万の費となりても、過分め利潤なり、池沢など人家に近き所あらば、才覚ある人は見立て多く畜べし、手足の不具なる者、農事のあらく強き働らきなりかぬる者に守り飼すべし、第一は其者の困苦お助け、慈仁ともなるべし、