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飼鳥必用

唐家鴨(○○○) 一名大家鴨(○○○)と雲
此鳥羽色種々有り、形は雁金より少し小さく、常の家鴨とは違ひ格別大鳥也唐人食物に長崎へ持渡る也、
すたえんとう(○○○○○○) 一名立ち家鴨(○○○○)也
天明年中、紅毛人長崎へ持渡、初薩州へ廻る、京都上方〈江〉も手広く相生立、近年不珍候へ共、初て長崎〈江〉渡る折は、珍敷雲ふらしけり、形常の家鴨にて、頭おあげ立行也、宜敷鳥は後へ反り、至て珍敷あゆむものにて、面白きもの也、
口黒家鴨(○○○○)
此家鴨、觜足真黒にて総羽白し、此家鴨より先に、とんこく家鴨出る、右とんこく家鴨、総身黒にて烏のごとく、口黒家鴨は琉球国の産にて、上方東都へ一向不見也、
ばるけん 一名くわんとう家鴨と雲
此鳥常の家鴨より格別大きくて、赤きとさか有り、鶏の柘榴さかの如くあるおよしとする、雌は頭迄少し赤し、此ばるけんの雄に、常の家鴨の雌お掛け合生立しお、大家鴨と雲へ共甚間違、是は掛合ものにて、東都においていぎりす共名お付る事に候へ共、誠のいぎりすにてはなし、和名にて不珍也、