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庖厨備用倭名本草
十/水禽
鴛鴦 倭名抄におし、多識篇におしどり、考本草、一名匹鳥、〓類也、南方湖渓の中にあり、土穴の中にすむ、大さ小鴨の如し、其形杏黄色にして文采あり、紅頭翠鬣、黒翅黒尾、紅掌也、頭に白長毛あり、是お垂て尾にいたる、頸お交へてふす、其交再せず、元升〈○向井〉曰、此説お見れば今俗に雲おしどりは鴛鴦にあらず、今雲おしどりは頭より尾に至るほどの白長毛なし、又おもひ羽と雲ものあり、下に雲鸂鶒すなはち今のおしどり也、倭名抄に、鴛鴦と鸂鶒と同条に載たり、是によりて鴛鴦鸂鶒わかちなく、倶におしどりと雲、後世おもひ羽あるおおしどりと雲て、真の鴛鴦おしらず、多識篇に鴛鴦おおしどりと雲、鸂鶒おおほおしどりと雲、よろしく是の説にしたがふべし、