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甲子夜話
二十三
これに就て林子が話には、鸂鶒の子お生ずるも、かはりたるものなり、義兄岩村侯〈松平能州〉の西丸下の邸地に、年々鸂鶒雄雌一双来りて子おなす、数少きときは七八より十一二、多きときは殆んど二十に及べり、あの如き小き鳥のいかなることにて、かく多く卵お温るか不審なり、扠その雛水に浮遊ぶ頃は、雄去て雌のみになる、雛生長すれば雌も去り、雛も皆飛去りて一双も残らず、来春又雄雌来り年々長く如此、