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古今著聞集
九/弓箭
此むつるの兵衛尉懸矢おはがすとて、とう(○○)の羽お求けるが、不足しければ、郎等共に、もしや持たるとたづねければ、上六大夫といふ弓の上手聞て、此辺にとうやはみ候、見よといひければ、下人立出てみて、隻今河より北の田にはみ候といふお聞て、則弓矢お取て出たるに、とう立て南へとびける、〈○中略〉
或所に的弓射けるに、晩に及ければ、明日や勝負すべきなど、人々いひける所、源三左衛門尉翔来りけり、〈○中略〉左衛門尉平助綱は、つや〳〵弓引はたらかす事協はざりけるもの也けり、家の棟にとう(○○)の飛きていたりけるお、是はいむなる物おと思て、立出てみるほどに、下人左右なく弓矢おとりて、あたへたりければ、なほざりにとりて、いたりける程に、あやまたず射おとしてけり、